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プロジェクトストーリー

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PROJECT 1 海外進出、第一号店。
それは、世界の情報が集結する上海の真ん中に。

「活悦健身咨詢(上海)有限公司」。
中国進出を果たしたウェルネスフロンティアの、現地法人の社名である。
2015年8月15日。上海の地に、
24時間フィットネス「JOYFIT虹海路」がオープンした。
2001年に直営1号店を開業してから14年。
北海道・帯広で描いた夢が、まさに花開き、
現実となった瞬間だった−−−−−

活悦健身咨询 (上海)有限公司 总经理
健康前沿(香港) 有限公司 总经理
加藤 信也

グループの先兵隊として、
白羽の矢が立った、ジョイフィットの役目。

鳴り響くクラクション。足早な人々の往来。立ち並ぶ高層ビル群。アジアの匂いを残しながらも、いまや世界金融市場の中心地として注目を集め続ける、中国最大の都市「上海」。前年の11月に現地入りして9ヶ月。ジョイフィットの歴史を知り尽くした男が、あるビルを見上げてつぶやいた。「いよいよ、はじまるんだな」。その眼差しには一点の曇りもなく、その胸の内は、ただただ自信とやる気に満ちていた。
男の名前は加藤信也。1989年の入社以来、25年以上もの間、あらゆる事業を経験してきた彼はいま、総経理(社長)という立場で中国の地に立っている。彼の下には、日本人スタッフが1名、中国人スタッフが3名いた。もちろんそれは頼れる仲間ではあったが、新しい店舗を立ち上げるには、実に小さなユニットとも言えた。しかも、それは異国の地なのだ。だからなおさら、新店オープンは画期的な出来事として彼の心に刻まれることになる。
「数年来、ウェルネスフロンティアとして、さらに母体であるオカモトグループとして海外進出を検討してきました。その先兵隊に選ばれたのが我々ジョイフィット。この1号店の成功はそのまま、グループの未来を大きく拡げるものになります。その自負もありましたが、当然、プレッシャーも大きい。それはいまも継続している想いです」。日本のマーケットがシュリンクしていくことが明白になる中、日本の各業界、各企業はこぞって海外進出を進めている。発展著しい中国はその選択肢の中で、一番目にあがる国だと言っていいだろう。だが、もちろんのこと、その闘いは一筋縄ではいかないのだ、と加藤は言う。

24時間型のフィットネス。
出陣1年目でぶつかった、いくつもの壁。

現在、日本国内に171店舗を展開するジョイフィット。かつて「ジム」「スタジオ」「プール」という三種の神器がフィットネスクラブの王道だった頃に、ジョイフィットは「プール」をなくすことでイニシャルコストを圧縮し、急激に店舗を拡大してきた。また、業界に先駆けて24時間営業型の施設を開発。都市生活者のニーズに応えるかたちで、ブランドの細分化を推し進め、着実に成長してきたという経緯がある。
上海の地に立ち上げたのは、通称「赤ジョイ」と呼ばれる24時間型のフィットネスクラブである。「ビジネスとして『赤ジョイ』が、成功モデルになっていることは確か。100数十店舗を運営してきたノウハウを、最先端の世界都市で試してやろうという意気込みでした」。だが、そもそも商業文化が違う。言葉も違う。この数カ月は悪戦苦闘の日々だった、と加藤は言う。「日本と違って、商談の席にビルのオーナーさんは出てきません。契約が成立してから登場して、『細かいところはこれから調整していこう』という話になるんです」。さらに、言語の方はと言うと、「上海語はいわば、中国の中の外国語と同じ。『リーベンレン』と言えば中国語で『日本人』のことですが、上海では『サパニン』と言います」。
オープンしてはじめて気づくことも多かった。10月の国慶節、11月の「いい買い物の日」、12月のクリスマス、1月末からはじまる旧正月…。お金を使うタイミング、人々が動く時期など、商シーズンの違いには大きく悩まされたと加藤は振り返る。「季節指数については事前にシミュレーションもしていましたが、新規会員の獲得数は、スタートしてようやく掴みはじめているところですね。どの時期にキャンペーンをすれば効果的なのか、手探りをしながらの毎日です」。

データも、現場のリアリティも。
悩みながら試しながら、前へと進む。

加藤が中国で勝負したかったのは、日本のサービスの質だった。とりわけ、国内でも有数のクオリティを有するジョイフィットの接客スキルは、上海のアッパー層にも響くはずだと加藤は睨んだ。「上海には多くの富裕層が暮らしています。日式のサービスはきっとウケるはずだと思いました。ただ、現地採用のスタッフは、その重要性をすぐには飲み込めない様子でした」。日本人の元キャビンアテンダントが主催する、日式サービスのセミナーにスタッフを通わせたこともあった。だが、別の考えも頭をよぎる。「過剰なサービスは、かえって中国のお客様に失礼になることもあるのではないか」。日本のやり方で新天地に挑む一方で、日本のやり方を引っ込める方が賢い瞬間もあるのだ、と加藤は感じる。
「日本では約3%がフィットネス利用者だと言われていますが、こちらではまだ0.8%。上海の人口は2450万人ですので、まだまだポテンシャルはあると思います。ただ、数字だけにとらわれるのも危険。データを参照しながらも、現場のリアリティを優先しなければ勝負に勝ち残れないと思っています」。富の二極化が語られがちな中国。平均値とされるデータも、内実を垣間見ると、まったく別の景色が広がっていることは少なくないという。
いまや日本以上に物価の高い上海だが、設定した利用料金が正しいのかどうか、つねに悩む。集客のためにどの媒体に広告を投下すれば良いのか、頭をひねる。道は半ば。ひとつ、ふたつと手を打ち、次の一手を用意する。頭脳と皮膚感覚。日本式と中国式。国内市場では決して味わえない、ダイナミックかつスパイシーな駆け引きが続く。

早くも2号店のオープン。
そしてさらに台湾へ、ASEANへ。

まさに激動の只中にいる加藤だが、驚くべきことに、上海での2号店もオープンが間近なのだと加藤は言う。「このスピード感がウェルネスフロンティアなんですよ(笑)。成功事例を待ってから動くのではなく、動いて成功事例を掴みにいく姿勢です」。ジョイフィットが立地選定で重要視しているのは「CG(コンシューマー・ジェネレータ)」と「TG(トラフィック・ジェネレータ)」。人々を呼び寄せる磁力があるか、交通の要所か。その2つの基準をクリアした物件があれば、攻めに行くのがウェルネスフロンティア流。「抜群の立地環境で、建物も幹線道路に面している。24時間営業というスタイルは周辺にないので、絶対に勝ちます」。500m圏内に競合のフィットネスクラブ4店が乱立していてもなお、加藤の姿勢は強気である。
さらに視野を広げると、2016年末を目指している台湾での出店をはじめ、いくつもの国際都市がターゲットにあがっている。ジョイフィットの海外戦略はアクセルを踏み込んだトップギア状態だと言えるだろう。加藤は言う。「いまウェルネスフロンティアの本社は東京にありますが、数年後に上海に移転していても不思議ではありません。あるいはベトナムかもしれないし、インドネシアかもしれない。その試金石になるのが、いま私たちが手がける店舗の成否なんです」。
5年で50店舗。加藤が自らに課す、ジョイフィット中国出店のミッションだ。コンセプト、店内の清潔感、マシンのラインナップ、そして接客力。Made in Japanの誇りを持ちながら、けれど柔軟に変容しながら、ジョイフィットは前へと進む。「間違いなく、チャンスが掴める会社」。加藤は胸を張り、そのような言葉で自社を形容した。上海で見つけたチャンスは、何をもたらしてくれるのか。それは誰にもわからない。加藤はもう一度ビルを見上げる。その向こうには、はるか彼方にまで続く大きな空が広がっている。